
頭痛外来を開設しています
頭痛は多くの方が経験する症状で、日本人の約3〜4人に1人が日常的に悩まされているとされています。
頭痛は大きく、明確な病気が原因ではない一次性頭痛と、何らかの病気が原因となる二次性頭痛に分けられます。二次性頭痛には脳血管障害、脳腫瘍、髄膜炎など命に関わる病気が含まれることがあるため、適切な検査と診断が重要です。
一次性頭痛の一つである片頭痛は、一般に「頭の片側がズキズキ痛む」と捉えられがちですが、肩こりによる頭痛だと自己判断されていた方が、実は片頭痛だったという例も少なくありません。まずはご自身の頭痛のタイプを正確に診断し、適切な治療につなげることが大切です。
頭痛でお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
一次性頭痛
片頭痛
片頭痛は30歳前後の女性に好発し、中等度〜重度のズキズキと脈打つような拍動性の痛みが、頭の片側または両側に生じます。身体活動や光・音・においで悪化し、吐き気や嘔吐を伴なったり、光・音・においへ過敏になることがあります。誘因としては、睡眠不足、天候の変化、感覚への過度な刺激、ストレスなどが挙げられます。
多くの方がこの症状に悩まされていますが、治療薬は日々進歩しています。当院では予防を目的とした新しいお薬(抗CGRP関連抗体製剤)も取り扱っておりますので、ご希望の方は受診時にご相談ください。
片頭痛の治療は大きく2種類に分けられます。発作時にできるだけ早く痛みを抑える急性期治療と、発作を起こりにくくし、起きても軽く済むようにする予防療法です。
近年、エムガルティ、アジョビ、アイモビーグなどの新しい片頭痛予防薬が登場し、高い治療効果が報告されています。当院ではいずれの薬剤も処方可能です。従来の治療薬で十分な効果が得られていない方は、診察のうえ、適切な治療法をご提案しますのでお気軽にご相談ください。
緊張性頭痛
緊張性頭痛は、主に首や肩の筋肉のこりがきっかけで起こる頭痛です。片頭痛と異なり、頭の両側や後頭部〜側頭部にかけて、締め付けられるような鈍い痛みや「頭が重い」感覚がみられます。
一般的に吐き気や嘔吐は目立たず、日常的な運動で増悪しにくく、むしろ肩や首を動かすと痛みが軽くなることがあります。長時間の同一姿勢や目の疲れ、ストレスなどによって筋肉が張り、その状態が続くと後頭部から側頭部にかけて痛みが生じます。疲労がたまりやすい夕方に強くなる傾向があります。
治療は、内服薬に加えて、マッサージ、ストレッチ、適度な運動や筋力トレーニングの継続、姿勢の是正、十分な休息・入浴・温罨法、ストレス対処などの生活習慣の見直しが有効です。鎮痛薬の使い過ぎは頭痛をかえって悪化させることがあるため、適切な使用方法については受診時にご相談ください。
群発頭痛
群発頭痛は、目の奥〜こめかみにかけて「えぐられるような」激しい痛みが出る頭痛で、20〜40代の男性に多くみられます。発作時には結膜充血・流涙・鼻汁(鼻閉)・発汗・まぶたの腫れなどの自律神経症状を伴うことが特徴です。春先や秋口など季節の変わり目に集中して起こり(発作期)、その後しばらく症状が落ち着く(寛解期)という経過を繰り返します。夜間に発作が出やすいこともあります。
原因は完全には解明されていませんが、自律神経の異常や体内時計の関与が指摘されています。また、発作期の飲酒は発作を誘発しやすく、喫煙はリスク要因とされています。
治療には、発作時の痛みを速やかに抑える急性期治療(高流量の酸素吸入、トリプタン製剤など)と、発作の頻度や強さを抑える予防療法(カルシウム拮抗薬など)があります。最適な治療は症状や既往歴によって異なりますので、まずは適切な診断を受けることが大切です。強い頭痛が繰り返し起こる場合は、早めにご相談ください。
新規片頭痛薬【エムガルティ】
エムガルティは、2021年4月に登場した片頭痛の予防薬です。これまでの予防薬とは異なる作用機序の、新しいタイプのお薬です。慢性的な片頭痛などで従来の予防薬の内服では効果がえられず、日常生活に支障をきたしている方(頭痛発作が4日以上/月)に投与が可能となります。ご希望の方は受診時にご相談ください。
効果
片頭痛は、「CGRP」という物質が脳の血管と炎症に作用して起こるとされています。
エムガルティは、この「CGRP」の働きを抑えることで、片頭痛を起こりにくくする効果が期待できます。
これまでのデータからは、エムガルティを使用した患者様は、月に8.6日あった片頭痛が3.6日減ることが示されました。 また片頭痛の頻度が50%以上減った患者さまの割合は、49.8%でした。75%以上減った患者さまは25.5%、100%減った(頭痛がなくなった)患者さまは9.0%でした。

エムガルティの使い方
エムガルティは注射するタイプのお薬です。初回に2本、以降は月に1本のペースで注射を継続します。

副作用について
注射をした部位の痛み、発赤、かゆみ、内出血や腫れなどが生じる場合があります。
多くの場合、注射した日に出現し、数日以内に消失します。
その他の副作用として、皮膚のかゆみ、じんま疹、発疹などが報告されています。
対象となる方
- 18歳以上で医師に片頭痛と診断されている方
- 過去3か月間で、片頭痛が平均して1か月に4日以上ある方
- 日常生活上の注意や急性期治療薬(ロキソニンやトリプタンなど)を使用しても日常生活に支障がある方
- 片頭痛発作の予防薬(インデラル、ミグシス、デパケンなど)の効果が乏しい方、または内服の継続が困難な方
エムガルティの費用(3割負担の場合)
- 1本約12,800円
- 初回(2本注射)約25,600円
- 翌月以降(1ヵ月月に1本)約12,800円
新規片頭痛薬【アジョビ】
エムガルティと同じく、「CGRP」に結合し、働きを抑えることで、片頭痛を起こりにくくする効果が期待できます。

使い方
アジョビは、4週間ごとに1本投与、または12週間ごとに3本投与を患者様の生活状況に合わせて選んでいただけます。

4週間に1回、1本注射の場合

12週間に1回、3本注射の場合
副作用について
注射をした部位の痛み、発赤、かゆみ、内出血や腫れなどが生じる場合があります。
また、注射した部位が硬くなる場合もあります。
多くの場合、注射した日に出現し、数日以内に消失します。
アジョビの費用(3割負担の場合)
- 1本約11,800円
新規片頭痛薬【アイモビーグ】
アイモビーグは、「CGRP」を受け取る受容体に対し、必要以上に「CGRP」を取り込まないよう作用することで、片頭痛を起こりにくくする効果が期待できます。

使い方
4週間に1回の間隔で、1回1本を投与します。 投与予定日に投与できなかった場合は、可能な限り速やかに投与を行い、以降はその投与日を起点として4週間に1回の間隔で投与を行います。
副作用について
注射をした部位の痛み、発赤、かゆみ、内出血や腫れなどが生じる場合があります。
多くの場合、注射した日に出現し、数日以内に消失します。
その他の副作用として、便秘や眠気などが報告されています。
アイモビーグの費用(3割負担の場合)
- 1回あたり約11,700円
二次性頭痛
命をおびやかすケースもあり迅速に正確な診断をつけることが大切です。
今すぐ受診した方が良い"危険な頭痛"
- 突然の激しい頭痛
- 今までにない強い頭痛
- 長期間続く頭痛
- めまい、嘔気を伴う頭痛(後頭部痛)
- 頭痛が日増しに強くなる
- 高熱を伴う頭痛
- 言葉の障害(ろれつがまわりにくい、言葉が出ない等)を伴う頭痛
- 意識がもうろうとなる頭痛
- 頭痛の後に意識が朦朧となる場合
- 視覚異常を伴う頭痛
- 手足の麻痺や感覚、しびれを伴う場合
上記に記載のある頭痛はくも膜下出血・脳出血や脳腫瘍・髄膜炎 脳炎などの恐れがある危険な頭痛ですので、お早めの受診をおすすめいたします。